【中学受験の疑問】なぜ中学受験では“手段”と“目的”を混同してしまうのか?

皆さん、こんにちは
中学受験コンサルタントの野田英夫です。

今回は、多くの中学受験家庭が陥りがちな、「手段」と「目的」の混同についてお話ししたいと思います。

「塾の成績を上げることが、いつの間にか目的になってしまった…」

「クラスを上げることばかり考えて、何のために受験しているのかわからなくなった…」

こんなふうに感じたことはありませんか?

本来、志望校合格というゴールにたどり着くための「手段」であるはずのものが、いつの間にか「目的」になってしまう。この問題は、特に大手集団塾に通うご家庭で顕著に見られます。

【大手集団塾が「目的」をすり替える理由】

中学受験は、塾の成績、クラス順位、模試の偏差値といった数字が常に飛び交う世界です。
これらは本来、お子さんの現状を知り、志望校合格という目的に向かうための「手段」に過ぎません。

しかし、多くの大手集団塾は、この「手段」を「目的」にすり替えることで、保護者と受験生をコントロールしていると言えるでしょう。

  1. 塾の成績 = 合格、という幻想

多くの保護者は、「塾の成績が上がれば、志望校に合格できる」と信じ込んでいます。
塾側は、この思い込みを利用し、「成績を上げるための勉強」をさせます。
クラスアップやテストの点数を目標にすることで、保護者は塾のシステムに丸め込まれていきます。
しかし、塾の成績は塾内での相対評価に過ぎず、志望校の入試問題が解ける力とは直結しません。つまり、志望校の合格には直接的な関係はありません。

  1. 塾の都合で生まれる「過剰な競争」

大手集団塾は、優秀な生徒を難関校に合格させることでブランド力を維持しています。
そのために、生徒を「過剰な競争」の渦中に巻き込むことで、保護者の冷静な判断能力を奪っていきます。

「〇〇くんはもう過去問を始めたらしい」

「〇〇ちゃんはαクラスに上がったって」

こうした情報が、保護者の焦りを生み、塾の競争にのめり込ませます。
すると、いつの間にか「塾の成績を上げること」が最優先の目標となり、本来の目的である「志望校合格」がすり替えられてしまうのです。

  1. 「親の責任」というプレッシャー

塾の個別面談などで、「このままでは志望校合格は難しい。お母さんもフォローしてください」と言われた経験はありませんか?
これにより、保護者は「子どもの成績が悪いのは、母親である私の責任だ」と感じるようになります。

親が勉強を教える「親塾」は、親子関係の悪化や子どもの自己肯定感の低下を招く「百害あって一利なし」の行為ですが、塾の成績を上げるために、親自身が授業のフォローをしなければならないという状況に陥ってしまいます。

【目的を見失わないために】

では、このループから抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。

それは、常に、

「これは何のための勉強か?」

「どうして中学受験しているのか?」

「いまの勉強は志望校合格に最適か?」

このように、自問自答してみることです。

[目的]
志望校に合格すること。そして、その学校で学びたいことを学び、将来につなげること。
[手段]
塾に通うこと。成績を上げること。模試で良い判定を取ること。

「目的」と「手段」の違いをしっかり理解しておかないと、塾の都合にコントロールされてしまいます。

SNSなどを見ていると、小6の2学期にもなって塾のクラスを上げるために、クラス分けテストに躍起になっている家族が見受けられます。
これは手段が目的にすり替わっている典型だといえるでしょう。

さらに大手集団塾だけでなく、塾の成績を上げることを煽る個別指導塾や家庭教師についても、大手集団塾の競争戦略に便乗商法であり、手段が目的にすり替える意味で、とても罪深いと言わざるを得ません。

塾の成績やクラス順位は、あくまで志望校合格というゴールに向かうための「通過点」に過ぎないのです。

お子さんが自分らしく、自信を持って学べる環境を見つけ、志望校合格という「目的」に向かって、戦略的に、そして着実に歩んでいくこと。これが、塾の都合に振り回されない、幸せな中学受験を実現する唯一の方法です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
では、また!
中学受験コンサルタントの野田英夫でした。

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