【中学受験の疑問】父親は、なぜ他人事なのか?――“味方不在”が家庭を壊す

涙が止まらなかった、夫のひとこと

「夫から“お前が好きでやってるんだろ”と言われたとき、
涙が止まりませんでした」

これは、あるお母様から実際に伺った言葉です。
家庭でひとり、中学受験を背負い続けた末に、
夫からそんな言葉を投げかけられたとき、
心が折れてしまったと言います。

夫には悪気はなかったのかもしれません。
しかし、実際には多くの家庭で、
中学受験の“温度差”が夫婦の関係を静かにむしばんでいるのが現実です。

私自身、以前大手の集団塾に勤めていたとき、
中学受験を終えた直後に離婚されるご家庭を何度も見てきました。
合格した・しないに関係なく、「受験の過程」で夫婦がすれ違い、信頼関係が壊れてしまう。
それほどまでに中学受験は、家族にとって重大な出来事なのです。


中学受験は「母親の方が向いている」?

たしかに、母親の方が子どもの様子に敏感で、
学習内容にも細かく目を配ることができます。

「中学受験は母親の方が向いている」
――そう言われれば、そうかもしれません。
でも、それは“母親だけがすべて背負うべき”という意味ではないはずです。

実際、多くの家庭で中学受験は「母親の孤独な戦い」になっています。

では、なぜこうなってしまうのか。


父親には「見えていない」中学受験の現実

父親は中学受験を経験していない。
自分の成功体験である大学受験と比べてしまう。
でも、12歳の子どもと18歳の自分では、心の成熟度がまったく違う。

だからこそ、母親の焦りや不安、葛藤が伝わらない。

「妻が勝手に始めたことだから」
「勉強くらい本人がやればいい」
「受からなきゃ高校からでいいじゃないか」
「そもそも中学受験には反対だった」

そんな言葉が、母親の心をますます追い詰めていきます。


母親が“狂気”に見えるのは、正常な反応

泣きたい夜もある。
ヒステリックになる日もある。
子どもにきつく当たってしまって、自己嫌悪に陥ることもある。

でも、それはすべて――
「子どものために、どうにかしてあげたい」という、母親としての本気です。

狂気に見えるのではなく、誰よりも真剣だからこそなのです。


家庭のバランスが崩れていく瞬間

母親が頑張れば頑張るほど、家庭内のバランスは傾いていきます。

  • 子どもへの過干渉
  • 夫婦間のすれ違い
  • 家庭に重たい空気が流れ出す

この“家庭内失調症”こそ、中学受験の本当のリスクです。
そして一番つらいのは、本来は守ってあげたいはずの子どもたちです。


■“味方がいる”という安心が母親を救う

受験そのものが過酷なのではありません。
味方がいないことが、母親を苦しめているのです。

  • 夫がただ話を「聞いて」くれたら。
  • 子どもの勉強に少しでも「関心」を持ってくれたら。
  • 「頑張ってるよ」と言ってくれたら。

それだけで、母親は涙が出るほど救われるのです。


最近では、一緒に戦う父親も増えてきた

最近は、共に受験に臨む“父親”も増えてきました。
イクメンと同じように、“ジュケメン”という言葉が生まれても不思議ではないほどです。

子どもにとっても、
「お父さんも自分を応援してくれてる」と感じることは、
とても大きな安心感になります。


どうすれば“父親を味方”にできるのか?

――母親のための「巻き込みステップ3つ」

「夫にももっと関わってほしい」
「私ばっかり背負っているのがつらい」

そう感じているお母様へ、
父親を“受験チーム”に加えるための3つの工夫をご紹介します。

ステップ①:「情報共有」から始める

いきなり「もっと手伝って!」と言うと、父親は構えてしまいます。
まずは、小さな“相談”から。

  • 「今日、塾でこんなことがあったんだけど」
  • 「志望校、子どもは●●って言ってるの。どう思う?」

“報告”より“相談”のスタンスが、父親のスイッチを入れます。

ステップ②:「役割」を明確に伝える

「何かして」ではなく、「これをお願い」と具体的に。

  • 「土曜の送り迎えだけお願いできる?」
  • 「説明会、一緒に行ってほしいな」
  • 「志望校のパンフレット、読んでくれたら嬉しい」

限定的”かつ“明確”な依頼が、父親を動かします。

ステップ③:「感謝」を伝える

父親が何かしてくれたら、まずは一言――

「ありがとう、助かったわ」

このひとことが、父親にとっては大きな原動力になります。
父親は単純です。でも、それでいいのです。
“味方になった実感”が、継続的な協力につながっていきます。

巻き込む際に、気をつけたいこと

ただし、父親を巻き込むときに注意したいポイントもあります。

  • 会社の部下のように、子どもを「管理」しはじめてしまうことがある
  • 「他の家庭ではもっとやってるのに」と、比較しない方がいい

父親には父親のやり方、ペースがあります。
「自分の言葉で届いた」「自分の意思で関わっている」と思えることが、
継続的な協力を生む鍵です。

無理やりではなく、自然と“巻き込まれていく”関係づくりを目指しましょう。


「ひとりで背負わない覚悟」が、家族を守る

中学受験は、家庭全体のプロジェクトです。
誰かが壊れてしまったら、受験も家族も崩れてしまいます。

だからこそ――
「ひとりでやらない」覚悟を。

そして、その第一歩が、
“父親を味方にすること”です。


すべての母親に、エールを込めて。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

では、また!

中学受験カウンセラー野田英夫でした。

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